こんにちは。読売テレビ技術局の西村です。
この度は、読売テレビが取り組んでいるクラウド編集の仕組みについて詳しくご紹介させていただきます。
クラウド編集の概要
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読売テレビには、オンプレミスの設備として、10室のオフライン編集室と3室のオンライン編集室があります。
これらの編集室は、制作編集サーバーを介して接続されています。
ロケやサブで収録した素材はこのサーバーにインジェストされ、それを各編集室で利用することができます。また、編集室を移動しながら作業の続きを行うこともできます。
オンプレとクラウドの同期
制作編集サーバーとクラウド上のストレージは連携しており、同期の領域や間隔は柔軟に設定可能です。
現在、5分間隔での同期が実施されています。
編集サーバーとクラウドストレージの同期には、同期専用のPCを使用しています。
このPCは、編集のネットワークとクラウドストレージの両方に接続されています。
同期ソフトウェアとしては、オープンソースのFreeFileSyncを使用しています。
Amazon WorkSpacesと編集ソフト(EDIUS X Workgroup)
AWS(Amazon Web Services)上に構築した仮想マシンにはクラウドストレージがマウントされ、オンプレ環境と同じように編集作業が行えます。
今回、この仮想マシンの構築にはAmazon WorkSpacesを使用しており、編集ソフトとしてグラスバレー社のEDIUS X Workgroupがインストールされています。
さらに、ライセンス認証のためにAWS上にEDIUS X Floating License Serverも設置しています。
LucidLinkの活用
Amazon WorkSpaces上でのクラウドストレージのマウントに、LucidLinkというサービスを使用しています。
LucidLinkは、クラウドのオブジェクトストレージをローカルディスクのように使用することができる非常に便利なツールです。特に映像ファイルのキャッシュ利用やユーザー管理機能が優れており、他の類似ツールと比較してもLucidLinkが最も優れていると感じています。また、強力な暗号化通信を使用しているため、セキュリティーの面でも非常に優れています。
クラウド編集の特徴
クラウド編集には、Windws、Mac問わず、個人のPCを使用して仮想マシンを使用できます。

セキュリティの観点から、現在は素材のアップロードやダウンロードは許可されていません。編集データはオンプレの制作編集サーバーと同期されるので、オンプレの編集室とクラウド編集を柔軟に使い分けることが可能です。
メリットとデメリット
クラウド編集の最大のメリットは、場所を選ばずに編集作業ができる点です。

セキュリティの都合上、社外での映像素材のアップロードやダウンロードがまだできない点や、ある程度の高速なインターネット環境が必要である点がデメリットとして挙げられます。
現状と今後の展望
読売テレビでは現在、クラウド編集システムをトライアル運用しています。
このシステムは番組制作のオフライン編集やポストプロダクションの段階で既に活用されており、実務に必要な性能と安定性が確認されています。
さらに、家庭と職業を両立させる「ママディレクター」のテレワークにも活用されました。このシステムにより、自宅からでも編集作業が可能となり、多様な働き方を支援し、柔軟なワークスタイルの推進に貢献しています。
将来的には、トライアル運用の経験を基に、オンプレミスのサーバーとクラウドストレージをより柔軟に使い分ける計画を立てています。セキュリティーを維持したまま、場所を選ばず安全に編集作業ができるシステムの実現を目指します。
システムの継続的な改善を通じて、より効率的かつセキュリティーの高い編集環境の提供を目指すことが、制作の質の向上、さらにはより多様な働き方の選択肢を提供することにつながると考えています。
お問い合わせ先
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読売テレビ 技術局 技術戦略プロジェクト
西村 聡
satoshi.nishimura@ytv.co.jp